子供の頃、犬に噛み付いたことがある。
その犬の写真が出てきた。スピッツだ。名前は忘れた。チロとかシロとかいったのかもしれない。

この犬は、美馬生必(みませいひつ。卸問屋兼小売店)の共同経営者(多分)の飼い犬だ。
当時は、犬をつないで飼うという習慣はあまりなくて放し飼いが多かった。
ある日、このスピッツがひとりで我が家の近くに来たので「よしよし」と撫でていたら、いきなり手を噛まれた。
「痛っ!」
私は条件反射的に前足をつかんでガブリと噛み返した。スピッツは「キャンキャン・・」と逃げて帰った。
当時の犬は放し飼いが多いせいか、野良犬もたくさん居た。飼い犬と野良犬の区別は首輪のあるなしで判断していた。
しかし、野良犬から危害を受けた記憶はない。野良犬があんなに居たのに路面は今よりもきれいだった。今は、田んぼや堤防を歩くと犬の糞をよけてあるくことがある。犬の糞害は人間が起こしているに違いない。
この写真の後方には「茅葺屋根」がみえる。共同のゴミ箱もみえる。
谷向こうの「石井のじーさん」の姿も写っている。石井のじーさんからは、よく怒られた。それも当然、私が悪いことばかりしていたから。
幼児の記憶は三歳ころから覚えていて、もちろん、霞がかったような記憶で断片しか思い出せない。これが、5歳、6歳になってくると、はっきり度合いが増加してくる。
例えば「月がとっても青いからを聞いたのは3歳の頃」「若いお巡りさんは4歳の頃」「船方さんよは5歳の頃」「おーい中村君は6才の頃」・・と、歌手や歌詞だけでなく、その頃の情景が、だんだんとはっきりしてくる。

